風景描写が苦手な彼の好きな小説は内省的な私小説ばかり。現実でも道案内が苦手。台詞のやりとりには常に嘘を孕む。ナマモノだから。信念が一瞬一秒他人によって揺らぐ男だ、初めからそんなものを持たない男だ。だのに芸術家やクリエイティブに憧れる。忍耐も努力も知らない子供のくせに傷ついたフリも上手くない、ただグズついてるだけの不憫なやつ。自堕落や欠陥が愛される人間になれると心のどこかで信じている甘えん坊。何にぶら下がればいいのか分からず、とりあえず現実の荒波を避けて柔らかいバーを叩いて逃げてる。父親からの負の遺産。忌むべき因習。同じ様に母親からの負の遺産もある。この2つが自分の人生にチラつく間は必然的に私はここから離れられない様になっている。乗り越えるべきであるが踏み倒してこそかコンプレックスとの真の向き合い方の様な気もしている。時間は有限。私にはそれが疎い。アルバイトをしながら数えるあと何時間と解放されてから時計を眺める時の虚脱感。あれ、何すればいいんだ、どこにいけばいい?半信半疑で片っ端から目に付いたコンビニをうろついている私。死が遠い。生はもっと遠い。だのに心臓はこんなに騒がしい。泣けなくなった。怒りにはすべて蓋をした。思考を止めた。図太くなった気がするし、不感症ってやつなのかもしれない。正しい呼吸がしたくて仕方ない。